お土産を探しに

洗礼者ヨハネ大聖堂をポーランドの人々が大事にしているということを強く感じた私は静

かに教会から出ることにした。

すると私たちとは逆にちょうど観光客が大勢入って来た。

ハンナはそれを見て、「こちらから出ましょう、私は近道を知っているから」と言い、地元

民しか知らない細い暗い通路から出口に向かった。

私たちはすんなりと外へ出ることが出来た。

ヨハネの顔は印象的であったな、と建物を振り返り見上げながら私はため息をついた。

すると、私はショパンばかりを追うことに夢中になっていて、日本で待っている母のお土産

をまだ買っていないことにはたと気が付いた。

ハンナに相談すると、「それならポーランドで有名なネックレスがいいわね、」と教えてく

れた。

しかし、私には予算というものがあるのだ。

ハンナと旧市街のひなびた、いえ、風情のある美しい景観の商店街を私は歩いた。

しばらく行くと、小さな小物屋さんのようなお店に来た。ショウウィンドウにもたいして目

立つものも飾られていない。

「ここなら素敵なお土産がみつかると思うわ」とハンナは言う。

私は「こんにちは」と挨拶して中へ入った。

お店のオーナは落ち着いた上品な感じの中年女性だ。こじんまりとしたお店だがいいものが

ありそうだ。

「母のお土産を探している」と私が話すと、「いろいろネックレスならあるから観てくださ

い」と幾つか飾ってあるものと、引き出しの中からもオーナーが出してきて見せてくれた。

私の母は体が大きい。

「大きい方なら大きい石が似合いますよ」と豪華なネックレスを勧められたが、大きいとい

うことは値段も高くなる。本物であるから仕方がない。

私は母の喜ぶ顔を想像しながらなかなか決まらない。

結局、本物であり小ぶりでも質の良いものを予算内で決めた。

母は高価なものを欲しがる人ではない、要は気持ちが大事なのだと自問自答したが、私はた

いして親孝行ができない自分を責めたりもした。

ハンナはそんな私の様子を見て、「いい買い物ができて良かったわね、ちょうどいい大きさ

だと思うわ。きっとお母さんは似合って喜んでくれるわ」と私の気持ちに寄り添い胸を撫で

おろした。